新型コロナウイルスの影響とあけぼのの将来像

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、私たちの社会はあらゆる面で大きなインパクトを受けています。もちろん、薬局、薬剤師に対する影響も大きく、今後はその存在意義がより厳しく問われることになるでしょう。今回は、私たちの現在の状況とアフターコロナについて考えてみました。

新型コロナウイルスの感染拡大による社会の変化によって、あけぼのグループも大きな影響を受けています。売り上げ、利益ともにマイナスですが、想定の範囲ではあります。今回のような新型感染症の流行そのものを予測するのは難しいですが、何かあるかもしれないと、手元のキャッシュを積み上げるなどして準備をしておくことは大切ですね。これはグループ全員の日頃の努力の結果であり、当社で備えができていたのは本当に良かったです。派手な投資をしない地味な会社と思われているかもしれませんが、結果的には正解だったと思います。投資をするならこれからでしょう。当社の目線と合う条件の良い案件が出たら、積極的に投資したいと考えています。

今後は、薬局を取り巻く環境もドラスティックに変化していくでしょう。まず、お客様が求めることがシビアになります。今まで何となく使っていたサービスがコロナの影響で使えなくなった。そこで、「なんだ、使わなくても大丈夫だ」と思われるのか、「やっぱり使いたい。必要だったな」と思われるのか。利用されるサービスがシビアに選択されるようになるでしょう。 薬局でも、今まで毎日当たり前に飲んでいた薬を、止めようか、間引こうかと考えていらっしゃる患者様はいるでしょう。加算についても、突っ込んで考える方が増えてくる可能性もあります。経営者が薬剤師に対して、かかりつけ薬剤師指導料を取るよう強く求め、同意書を取ることに注力している薬局もあるようです。それが本当に患者様のためになっていればいいのですが、強引な勧誘では初めは加算が取れたと喜んでいても、そのうちその患者様はその薬局には行かなくなるでしょう。

誤解のないように言うと、加算を否定しているわけではありません。当社でも、できるだけ算定するようみなさんにお願いをしています。一方で、患者様からは加算分の料金をより多くいただくわけですから、その分のサービスを提供できないと信頼を失います。うわべの同意書では信頼関係は続かないでしょう。その上、患者様の側が、今回のコロナ騒動で経済的に苦しくなったとなれば、サービスに対する費用対効果をよりシビアに判断するようになるのは必然です。 今後の薬局運営を考えると、患者様のコスト意識は強くなるでしょう。しかし、みんながみんな全くサービスを受けたくないとは考えられません。お金を出してでも受けたいサービスや欲しい物はあるわけで、そこの線引きがシビアになると考えられます。患者様にとって「本当に必要な薬やサービス」にはきちんと対価を支払っていただき、しっかりケアやサポートをしていくことが重要だと考えています。日本には医療保険という素晴らしい制度があります。せっかく、毎月安くない保険料を支払っているのですから、この制度を上手く活用し、患者様の健康寿命を延ばしていくのは、保険薬剤師として、薬局事務員としての私たちの重要な使命です。

感染拡大の影響で、「オンライン診療」の制限が緩和され、それに伴って「オンライン調剤」が一部実施されるようになったのも、環境変化のひとつです。当社にも、スマホやFAXを通じて処方箋を送って下さる患者様が増えています。しかし、まだまだ少数派で、そして新規の患者様が多い状況です。時限的特例扱いが終了したあとにどうなるのか、注視しておく必要があります。

今後、オンライン診療がどこまで開放されるかわかりませんが、処方箋の流れが複雑化しているのは確かです。私たちには、オンラインの患者様を上手に取り込みながら、特徴の異なる門前の患者様を慢性と急性に大別して対応する「器用さ」が求められるようになるでしょう。オンライン、慢性、急性、それぞれで患者様を満足させるにはどうすればいいか? 普段からまとめて、ある程度マニュアル化しておくと満足度の高いサービスを広く提供できるのではないでしょうか。

それとこんなことを言ったら不躾かもしれませんが、取引先である医療機関の経営状況を気にしておくことも必要です。逆に当社も、銀行や問屋などからは常に与信管理をされていますから、取引先である医療機関の状態がわからないまま信用を落とすのは避けなければなりません。現場のみなさんは情報を一番にキャッチできますので、取引先医療機関の変化を見逃さないようにお願いします。

今後のあけぼのの運営を考えるうえで重要なのは、やはりリスク管理です。潰れなければ復活できる可能性はありますが、倒産してしまえば復活はありません。

各店の売り上げは、コロナ前には戻らないかもしれないとも考えています。残念ながら当社でも、本当に患者様が必要とする薬、サービスから外れたものを提供していた可能性はあるでしょう。そうしたものはどんどん削ぎ落とされていくはずです。今後は、真に患者様が必要としている薬やサービスを提供し、患者様一人当たりの技術料を上げることに注力したいと考えています。処方箋一枚当たりの技術料は約2千円と言われていますが、きちんと加算を算定することで、3千円ほどに上がった店舗もあります。もちろん、応需する科目により傾向はありますが、どの店舗も処方箋一枚当たりの技術料を上げる努力をするべきです。たくさん人を雇い、たくさん売り上げる、そんな売上至上主義は終焉を迎えています。

今後、あんなに大きな会社だったのにと、倒産のニュースを何度も耳にすることになると思います。みなさん一人当たりの稼ぐ力を高め、無駄なお金を使わず、効率の良い運営をしていれば会社が倒産することはまずないでしょう。あらゆる面で「非効率」は、会社を蝕むリスクです。

私たちは、ここ10年ほどの間にリーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルスと立て続けに大きな出来事を体験しました。次に何が来るのかはわかりませんが、何か社会に大きなインパクトを与える出来事は必ずまたやって来るでしょう。私たちにできることは、どんなピンチにも耐えられるよう、患者様のニーズに応え、手元キャッシュを積み上げておくこと。どんな難局も乗り越えていける強い会社を、みんなで作り上げていけると嬉しいですね。

社内報2020年夏号より