あけぼの通信2014.07.29「あなたのほっとファーマシー」を創造する、「ワクをはみ出た働き方」とは? (パート1)
「あなたのほっとファーマシー」という、これまでにない薬局像を実現するためには、スタッフ皆が楽しく働けて、力を発揮できる環境づくりが不可欠。そこで、多くの企業のコンサルティングを手がける吉田典生先生に話を聞きました。キーワードは、「ワクをはみ出ること」。一体どういうことなのでしょう?
吉田 典生(よしだ・てんせい)さん
1963年生まれ。関西大学社会学部卒業後ビジネス誌記者を経てフリージャーナリストに。その過程で興味を抱いたリーダーシップ等に関する学習を続け、00年ドリームコーチ・ドットコム設立。企業研修プログラムの開発等を手がける。『上司を動かすフォロワーシップ』他著書多数
「リーダーシップ3.0」とは?
- 今日はわざわざオフィスまでお越しいただき、ありがとうございます。
吉田 いえいえ、実は、御社には親しみがありまして。私、自宅が武蔵小杉で、家内がよく武蔵中原店を利用させていただいているんですよ。
- そうでしたか。それはありがとうございます。
吉田 というわけで、妻がお世話になっているお礼もかねて、何でも聞いてください(笑)。
- では、さっそく(笑)。いま、調剤薬局は薬事法の改正などもあり厳しい競争にさらされています。患者様に選ばれる薬局になるために、私たちは「あなたのほっとファーマシー」という理想像を掲げ、それに向かって邁進しています。そのためには、スタッフが楽しく働けて力を発揮できる環境づくりが必要だと考えているのですが、他社はどんなことをしているのでしょうか?
吉田 業界を問わず共通しているのは、いま上手くいっている組織は「リーダーシップ3.0」を指向していることでしょうね。
- 3.0、ですか?
吉田 はい。そもそも「リーダーシップ1.0」はオーナー系企業にありがちな中央集権的なリーダーシップ、「リーダーシップ2.0」はアップルのスティーブ・ジョブズやユニクロの柳井正さんのようなカリスマ的なリーダーがフォロワー(部下や従業員など)を引っ張っていき、変革を起こすリーダーシップです。フォロワーはカリスマの指示に沿って動いていれば、事がうまく運びました。ところが、いま企業経営はリーダーシップ1.0や2.0ではうまくいかなくなってしまったのです。
- それはなぜでしょう?
吉田 仕事の内容が複雑になってきて、一人のリーダーの頭脳では対処できなくなってきたからです。また世の中のスピードがあがっているので上意下達でリーダーの指示を待っていては間に合わないこともあります。そこで「3.0」の考え方が出てきたんですね。
- 3.0とはどういうことですか?
吉田 簡単にいえば「リーダーが自分ですべて指示するのではなく、フォロワーが意見を言いやすい環境をつくりあげて、彼らの力を借りながら、仕事に対処していく」。そんな形のリーダーシップです。そうすれば、複雑で難しい問題にもスピーディに対応できるようになるし、「上司は何もわかっていない」という現場の不満も解消されるので、スタッフも楽しく働けるようになります。もちろん、リーダーも、仕事がスムーズに進められます。
インタビュアー
新村 理恵子(にいむら・りえこ)社長
1976年生まれ、東京薬科大学卒業。大手チェーン、個人薬局、ドラッグストアの経験を経て、株式会社あけぼの取締役に就任、2013年4月より代表取締役就任。2014年1月、神奈川県に3店舗群馬県に1店舗を運営する㈱エムシーコーポレーションを承継し、同社代表取締役就任。経営者と薬剤師の両視点から「あなたのほっとファーマシー」を追求。趣味、スキー&登山。
完璧なリーダーは要らない。
- そんな「リーダーシップ3.0」の職場をつくり出すには何をすれば良いでしょうか?
吉田 まず、リーダーがこれまでのワクをはみ出ることです。
- ワクをはみ出る、といいますと?
吉田 「自分の中のリーダー像を壊す」と言い換えても良いでしょう。
最近、どこの職場でもよく見られるのが、リーダーが責任を背負いこみすぎていることです。「リーダーはすべての判断を完璧に下さなければならない」「部下の仕事をフォローする、頼れるリーダーであらねば」。そんな意識のあらわれなのでしょうけどね。その結果、かえって事態が悪化させることが少なくありません。
- 私も心当たりがあるかも・・・。反省します。
吉田 でも、これは責任感のある人ほど陥ることですから。
リーダーシップ3.0の時代は、完璧なリーダーであることはムリですから、そんなリーダーを目指す必要はありません。重要なのは、フォロワーの力を借りることです。
そのためには、まず、助けてほしいことや不安なことを素直にスタッフに開示することが大切。すると、フォロワーも力になろう、という気になってくれます。
- なるほど。しかし、いままで開示していなかった人が心境を開示するのは、なかなか抵抗があるかもしれません。
吉田 確かにそうですね。心理学的にいえば、人は、慣れ親しんだ範囲=「コンフォートゾーン」から離れたくない生き物。これまでの自分を変えるのを嫌がるものです。いつも同じ居酒屋で飲んだり、同じ友人とばかり遊んだりするのはその例です。まして、「リーダーシップ3.0」を実践しているロール・モデルがいなければ、なおさらでしょうね。胸の内をさらけ出してうまくいっている例がいなければ、やりたくないでしょう。
- どうすれば、意識を変えられますか。
吉田 まずは小さなことでいいので、「行動を変えるメリット」を実感することが大切です。たとえば「行ったことのないレストランで食事する」「いつもと違う道を通って帰る」程度でかまいません。すると、「おいしい店を発見する」といった良いことが起き、変えることが楽しくなってくる。そして、仕事でも「試しに行動を変えてみようか」という気になるものです。
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